[]無のマスタリング

チーフ・エンジニアの森崎です。
音響ハウスのレコーディングのアシスタント時代良く耳にしたのは、『ミックスは最高だと思ったんだけどマスタリングをした製品を聴いたら音が変わってしまっていた。』というお話でした。質問してみるとレベルやバランスのことではなくニュアンスのことでした。だから音色を変えられないようにレベルをギリギリまで入れてほぼマスタリング済みCDのようなTDをする、エンジニアの方もいました。

そのような経験からマスタリングではマスター音源の良さを生かしつつ、キャラクターやニュアンスを出来るだけ変えずにCDフォーマットに変換するには?と考えるようになりました。方向性が正しければEQの調整もCOMPもほんの少しですみますので。

スターリング・サウンドグレッグ・カルビ今月号のサンレコ

『マスタリングの方向性としては、オリジナル・ミックスの完璧さをそこなわずそのままデジタル化することを目標としました。ケーブルの選択、コンソールの入力レベルの設定、最終的なCDレベルを見極めてのデジタル・レベル調整など、様々な処理要素はすべてこの基本方針に基づいて決めました。・・(中略)・・次にケーブルの選択に入りました。2種類のケーブルのサウンドを実際に耳で聞いて比較テストするのですが、この作業はどんなマスタリング・プロジェクトでも欠かせません。デジタル素材でも一度アナログに変換してマスタリング・コンソールを通すものなので、素材がデジタルだろうがアナログだろうが、この作業が大切なことに変わりはないのです。(P162)』
と語っていましたね。マスター音源をそのままCDフォーマットに変換すると物理的には情報量が下がってしまいますが、素材の中から音楽的な要素を引き出しアーティストの気持ちをリスナーに伝える、その橋渡しとなるのがマスタリングだと思います。そのための方法はいろいろありますが僕も最初に行なうのはケーブル選びです。ケーブル選びは食材の旨味を引き出すスパイスの選択に近いかもしれません。組み合わせ次第でいろいろな表現が出来ます。
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ケーブルは主にアクロッテックの8N、トランスペアレントMUSIC LINK、ワイヤーワールドECLIPSE、Saidera Ai SD-9003など、その他自作のケーブルも使っていますがマスタリングの作業前に必ず聴き比べを行なってます。聴き比べをする理由はサウンドの方向性を決めるため、もう一つはアーティストのサウンド好みを理解するためです。コンプやEQでもサウンドの違いを表現出来ますがケーブルの違いは音の雰囲気が変わりますので。

アーティストが理想としている細かなニュアンスを言葉では伝えられなくても、ケーブルの違いを聴いて頂くとイメージとしてはこっちが好みかな?これでもう少しHighが伸びたら最高なんだけど?と、コミュニケーションのきっかけにもなりますので僕にとってケーブルの聴き比べはとても大切なことですね。

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