Saidera Mastering Blog

CDマスタリング、DSDレコーディング、ハイレゾ配信&ストリーミング。 サイデラ・マスタリングは、常に最新のテクノロジーとワークフローにより「伝わる音」の技術を提供します。

[]ヲノサトルさん登場/5.6MHz DSDマスタリング@サイデラ・マスタリング


(スタジオ到着)

ヲノ:おはようございます!お久しぶりです。ラックの位置とかスタジオの雰囲気もずいぶん変わりましたね。

森崎:あの時からずいぶん進化しましたよ。

ヲノ:機材もずいぶん変わりましたね!これがKORG MR-2000Sですか。STUDER A820のラックに置いているところが良いですね。

森崎:見た目だけではなくこのように、専用の42ミリのシナ合板を敷くことで制振効果が抜群にあるんです。秘密のノウハウではないですが、筐体とかネジとか、ラック、インシュレーター、すべての機材の設置は足回りや、床なんかも影響うけるんですよ。あとはサイデラ・マスタリングで特別なのは電源ですね。
(詳しくはこちらを参照:DSDマスタリング(その1)「透明感のあるアナログサウンド」)




ヲノ:音源はこちらです。24ビット/48kHz、Aiffファイルです。DSDマスタリング、ものすごい楽しみ!

森崎:僕もどんなサウンドなのかとても楽しみです!まずは一番テーマとなる曲を5.6MHzと2.8MHzにアップコンバートして聴いてみましょう。確認のためにPro Toolsでオリジナルのファイルとも比較してみますね。どの曲を聴いてみましょうか?作品のテーマとなるような曲が良いですね。

ヲノ:音圧のある曲と広がりのある曲があるのですが、そうですね6曲目でお願いします。5.6MHzと2.8MHzの違いはどんな感じでしょうか?

森崎:無意識に聴いてもらいたいですが、5.6MHzの方がレンジが広く奥行きがありますね。最も解像度が高いサウンドです。それと比較して2.8MHzはもう少しまとまりがありパンチがあるサウンドです。では、これはどちらだど思いますか?

ヲノ:これはすごい!ライブの時、音が出る前の気配のようなものを感じるんですけど、その気配を感じますね。3Dのような奥行きを感じます。モノクロームな質感のサウンドファイルがパーッと天然色になったようです。

森崎:これが5.6MHzです。音が出る直前の独特の緊張感を感じました!ノイズに粒子がとてもきめ細かく聴こえます。低域はかなり低いところまで出ているのに全くこもって聴こえないですね。それに抜けの良いノイズが合わさってとても気持ちがいいです。では、次は2.8MHzです。

ヲノ:なるほど!まるで違うサウンドですね。5.6MHzを聴いてしまうとこちらの方は2Dのように聴こえます。音のバランスは良いのですが5.6MHzを聴いてしまうと物足りないですね。もう一度5.6MHzを聴かせて頂けますか?

森崎:こちらが5.6MHzです。

ヲノ:これですね。いやーこんなに違うものだとは思ってもいませんでした。あのパーッと開けた感じは5.6MHzが圧倒的ですね!

twitter
wonosatoru:KORG MR2000sだす。RT @kentarotakahash: おおっ。再生はなんでやってるんでしょ? QT @wonosatoru マスタリングでマジック体感中。モノクロームな質感のサウンドファイルが、DSD5.6MHzにアップコンバートした瞬間パーッと天然色に!

森崎:それにしても音が良いですねえ!このキックの音が。さすがヲノさんです!音像がとても大きく暖かみのあるサウンドです。OLD NEVEとかアナログ機材を使ってミックスしたんですか?

ヲノ:このアルバムはノートブックだけで作っているんですよ。音源は色々使っていますが基本的に内部の機材だけで音作りしています。そのためプラグインなどは限定されるので音の個性を作るのに苦労しますね。完全なフルデジタルですが内部だけで音作りしてるのでシンプルなので音の鮮度は高いですね。だから、マスタリングでは音の透明感や艶をプラスして頂けたらと思っています。

森崎:そうなんですか?!この音源すべて、まさかノートブックだけで作っていたとは本当に驚きです!ここまですべてデジタルで。

ヲノ:マスタリングはぜひ5.6MHzでお願いします。森崎さんはいかがですか?

森崎:これは、ぜひ5.6MHzでやりましょう!念の為にPCMも聴いてみますね?こちらがオリジナルの24ビット/48kHz、Aiffファイルです。PCMをそのままストレートにDAしただけです。

ヲノ:こんなにペタっとしてしまうんですね!アップコンバート恐るべしですね。DSD5.6MHzで録音したら音が良いのは分かるのですがどうしてアップコンバートして音が良くなるのでしょうか?

森崎:それはまず、時間軸の精度が上がるからです。クロックが44.1kHzに比べ5.6MHzでは128倍の細かさになります。それが一番大きいですね。PCMでもルビジウムの10Mなどのクロックなどを入力していくと、44.1KHzのクロックの精度を上げることで音はかなり良くなります。

ヲノ:アップコバートを絵に喩えれば、画素数256の原画を2560に拡大しても絵の荒さは変わらないはずと思いきや、いざ出力するとピクセルのプロッティング制度や印刷時のアンチエイリアス処理などで明らかに違った結果になるのとにてる気が。

森崎:そうです。たとえば携帯で撮った写真画像を印刷に使用するにはピクセルが足りません。それを大判で取ったデータ並みに顔像度をアップコンバートすると線が崩れること無く微妙なニュアンスをデリケートに処理出来るのと似ています。予測しながら音を作るのではなく細かいニュアンスまで、意図のままに聴こえるままに音作りが出来ます。最終的に44.1kHzに落としたとしても、それまでのプロセスがそのニュアンスの違いは音として表現されます。

さあ、それでは再生のフォーマットが決まりましたので、機材やケーブルを選択していきますね。5.6MHzのDSDファイルをKORG MR-2000Sでプレイバックして、Prism Sound MLA-2をインプットスルーします。それを24ビット/88.2kHzにAD変換して、24ビット/88.2kHzのままでTC Electronic SYSTEM6000でEQ、コンプなど微調整して、最終的に16ビット/44.1kHzに落とします。では、ADコンバーターのキャラクターを聴いていきましょうか。最初はPrism Sound Dream ADA-8から。

ヲノ:とてもバランスの良い音ですね。大人なサウンドです。レンジも広いし抜けも良いです。もう一つの機材はなんですか?

森崎:最後にPCMにADしなおすための、dCS 905です。

ヲノ:こちらは明るく派手ですが音の厚みがADA-8のほうが良かったです。もう一度ADA-8の方を聴かせて頂けますか?

森崎:了解!

ヲノ:この音ですね!こちらでいきましょう。機材やケーブルの選定は映画でいえばキャスティングですね。これが決まってしまえはサウンドは出来たも同然ですね。音でいうコンプとかEQがほとんどいらないわけですから。

森崎:今日はそのつもりです!とても分かりやすい表現ですね。僕は機材選びを特にシビアに行なっています。ケーブルのマッチングなんかも。音源の情報を出来る限り引き出すことがマスタリングでは一番大切な作業です。地味で根気と集中力がいるんですが。機材の選択、ケーブルの選択や、振動対策など細かいことの積み重ねこそが、最終的なサウンドクオリティーを左右します。音楽自体はまったく変わってないのに、よりよく生き生きとしてくるわけです。キャスティングと同じで機材やケーブルも楽曲によってはケンカしてしまうことがありますね(笑)

ヲノ:あとはそのキャストが演技してくれればいいわけで。

森崎:音量レベルはどのぐらいまで入れましょうか?

ヲノ:ギリギリまで大きく入れる必要は無いですが、iTunesなどで聴いて小さすぎないレベルでお願いします。

森崎:それはこちらが基本のレベル。こちらが1dB大きくしたものです。

ヲノ:基本のレベルのほうが良いですね。音のパンチが上がった気がしますがノイズの空気感や奥行きが損なわれてしまいました。

森崎:試しに0.5dBだけレベルを入れてみましょうか?

ヲノ:やはりファーストテイクのレベルが良かったですね。基本のレベルで行きましょう。先ほどから聴いているこのサウンドのままCDに出来たら最高なんですけどね!

森崎:ヲノさん、今までこのモニターで聴き比べてきた音は、既に16ビット/44.1kHzにプロセスして落としたサウンドですよ。ほぼこのサウンドのままのサウンドがCDに仕上がります!

ヲノ:そんなまさか!!この音がCDクオリティーだったんですか?信じられないです。この正弦波の揺らぎを16ビット/44.1kHzで表現出来るなんて、おそらくPCMで再現出来る限界のサウンドまで来ていますね。
DSDはとてもすばらしいですが、それ以上に森崎さんの機材の操縦が本当に素晴らしいです。

森崎:そういって頂けると、とてもうれしいです!(ますます笑顔で)


ヲノ:このように緻密に作り上げた作品は本当は良いシステムで音楽を聴いてもらいたいのですが音楽制作を目指して大学に来る学生さんがiPodとカナル式のヘッドフォンで音楽を聴いているんですよ。困ってしまいますね。バンドのライブなどでも最近はCDを配るのではなく音をSDカードに入れて配っているそうです。帰りに携帯で聴けるようにと(笑)

森崎:それは音楽ではなく情報ですね!(笑)
僕も音響の専門学校で年に一度マスタリングの授業をしているのですが、その時最初に聴くのが「どんなシステムで音楽を聴いていますか?」です。数年前まではフルサイズのオーディオで聴いてる生徒さんが何人かいましたが最近ではiPodでしか音楽を聴かない人が半分ぐらいいますね。

ヲノ:いま森崎さんがおっしゃったのは、今はハイエンドはいると。でもその下がMP3を携帯で聴いている層しかいなくて、その間がいないと。で、そここそいい音で音楽を聴いている人って今は激減していますね。

森崎:そうなんです。すごく少ないですね。10年前くらいですが、専門学校で初めて教えていた頃はフルコンポという幅44cmのオーディオを持ってる人はクラスで2、3人は居たんです。そのあとの世代になるとミニコンポになり、iPodのドックみたいなラジカセになり、今ではiPodにちょっといいヘッドフォンをさしていますというレベルです。

ヲノ:カナル型で。

森崎:そうです。

ヲノ:どうしましょう?僕らがね、どうこう出来る問題じゃないですけど。「普段、どんな音楽を何を聴いてますか?」と尋ねると、もうみんなの答えが分からないです。全員違うことを言うんで。多様化していて僕なんかは全然知らないものばっかり。多摩美術大学なんで、いろんな科目があるんですけど、一つは音楽に特化したゼミ、セミナーなんですけど。音楽好き多いんですよ。ミュージシャンなった人も多いし。


森崎:うちのオノが先月、ドイツから仕入れてきた日本初上陸の秘密の真空管コンプがあるんです。ロシア製のセラミックベースの軍事用のチューブが6本入ってます。それとPrism Sound MLA-2を聴き比べてみましょう。

ヲノ:勢いでいうと、真空管のコンプレッサーの方がこう来るんですよ、コンコンと。MLA-2のほうがバンランスとしてはいいような気がするんです。どっちがいいでしょうね?

森崎:MLA-2はバランスいいですよね。違いはおそらくローエンドの伸びとハイエンドの伸びがこっちの方があるんです。真空管の方はもう少しなだらかに落ちているから。

ヲノ:真空管の方が中高域のコツコツしているところが出て来て来るけど、ちょっと子供っぽいかな。MLA-2の方がもうちょっと大人な感じがするというか。それはいい悪いではないので、どちらを選ぶべきか迷っていたんです。最終的に落とし込んだときどっちが効果的かと思うんです。

森崎:MLA-2の音色の方が今の時代のミックスをそのままストレートに上げた感じですよね。

ヲノ:そうです、そうです。

森崎:それに対して真空管の方はちょっとした味付けが。

ヲノ:デフォルメがありますね。

森崎:濃いめの味付けですね、嫌みは全くないんですけど。

ヲノ:嫌みは全くないです。どっちをとるべきかと思っていたんです。聴かれる段階で、おっ!っていうフックが合ってデフォルメがある方がいいのか?ストレートにかっこいい大人の音がいいのか?

森崎:ちょっとラジカセで聴いてもいいですか?

ヲノ:そうしましょう。

wonosatoru:そして今はアンプ、コンプ、ケーブルなど経由する機材を選定中。映画で言えばキャスティング。これが決まれば「映画」は半分できたも同然。


ヲノ:MLA-2の方がいいですね!

森崎:どこが良かったですか?

ヲノ:不思議にラジカセで聴くと真空管の方がむしろ元気良くなく聴こえちゃう。不思議に狭く聴こえちゃうというか。
プリズムの方はこれで聴いてもおっ、ていう大人な感じが無くならないので。聴かれる環境としてはおそらくこういう環境の方が多いと思うので。

森崎:音の違いとして立ち上がりのスピードの違いを感じました。

ヲノ:コンプはかけていないんですよね?回路を通しているだけですよね?

森崎:そうなんですよ。MLA-2の方がフレーズに忠実な気がしました。演奏が隅々まで聴こえるような。音が出た瞬間の緊張感はこちらの方が感じましたね。特にキックの音がクラシックのグランカッサをトンて叩いた時のような、丸いんだけどアタックのある感じがMLA-2はよく出ていました。

ヲノ:真空管の方は大きな音で聴くと一瞬元気な音に聴こえたんですけど。

森崎:MLA-2を通して、さらに微調整して録りましょう。
映像でフルブラックをなかなか出せないとさっき話ししたじゃないですか。

ヲノ:僕も同じこと考えていました。フルブラックって音楽に例えたらそれは無音じゃないかと思うんです。無音の一つだけ上のところの音。解像度が荒いとそこが出せないから無音かバーンて出るかどっちかしかないですよね。DSDはそこが極限までゼロに近い何かが出るそれでしょうね。それが黒でしょうね。

森崎:この曲ってブレイクあるじゃないですか。あのブレイク明けの緊張感が特にすごかったんです。ビックリするぐらいハッとしました。

ヲノ:ね、だからブレイクがゼロじゃなくてあの黒なんですよね、データがない状態ではなく黒が写っている、沈黙が写っている感じ。表現出来ましたね、これ。

森崎:そういうことですよね。音楽の流れとしてはつながっていて。

ヲノ:つながってる。

森崎:音をリージョンで完全に切ってしまって無音にしてしまったのではなく。

ヲノ:作り方はそうであっても音楽的にはこう聴こえてくる。

森崎:その感じがこのパートとか抜群でしたね。音が消える瞬間と出る瞬間のほんのわずかな。

ヲノ:ほんのわずかな。それはこれだけ画用紙が大きくないと出来ない。画用紙が大きくて色数が多いからこのグラデーションが出る。まさにそういう感じですよね!

森崎:そうですよね。

ヲノ:いやー面白かったですよ。

森崎:サイデラ・マスタリングのモニターは、どなたにでも繊細な音色の違いや、ローエンドもしっかりと確認していただくために、日々、チューニングをおこたりません。ぜひ、みなさんにも立ち会いマスタリングを奨めてください。

ヲノ:ほんとうです。

(ここでランチブレーク(続きと秋刀魚のレシピは後日))

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wonosatoru:昼食はセイゲンさん自ら、旬の秋刀魚でパスタをつくってくれた。スタジオで賄い食を出していただいたのは初めてw

wonosatoru:塩して一夜干しにしたものをスライスし、オリーヴ油で揚げ焼きしてトマトソースで和えたそうです。RT @XXX: @wonosatoru 秋刀魚でパスタ!簡単で構わないのでレシピ知りたいですね〜♪ 美味しそう(´¬`)

wonosatoru:マスタリングに来てレシピ習ったのは初めてだ…

wonosatoru:そして「ヲノ君お子さん小学生だって?秋刀魚持っていきなよ!」とお土産までいただいてしまった。マスタリングに来て夕食のおかずもらうのは初めてだ… lockerz.com/s/136024118



wonosatoru:絵に喩えれば、画素数256の原画を2560に拡大しても絵の荒さは変わらないはずと思いきや、いざ出力するとピクセルのプロッティング精度や印刷時のアンチエイリアス処理等で明らかに違った結果になるのと似てる気が。@XXX PCM/DSD


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