Saidera Mastering Blog

CDマスタリング、DSDレコーディング、ハイレゾ配信&ストリーミング。 サイデラ・マスタリングは、常に最新のテクノロジーとワークフローにより「伝わる音」の技術を提供します。

[]ai kuwabara trio project マスタリングの記録(その2)コンバーター編


2012.5.15 on sale
「from here to there / ai kuwabara trio project」
定価:1800yen

マスタリングの記録(その2)
於2011年3月21日  @Saidera Masteringにて

【マスタリング当日の立ち会い人】
桑原あい:piano, compose 森田悠介:electric bass
上田隆志:recording & mix engineer 森崎雅人:mastering engineer


〜機材の選択〜
(ミックスバランスのよかった2曲目「3=log²(8)」を基準に選定)
森崎:まずは、音のバランスが良かった2曲目でADコンバーターを選んでいきましょう。ミックスマスターと切り替えがなら、演奏がどう聴こえるかを聴き比べてみて下さい。

♪〜「Aタイプ:PrismSound Dream ADA-8」試聴→ミックスマスターに切り替え

森田悠介(以下、悠介):こっちが、元の96kHzのやつですか。
森崎:そうです、ミックスマスター
上田:「これはProToolsの192 I/O から出てる音ですか?」
森崎:192 DIGITAL I/OのAESアウトから出している音です。
森崎:次は「Bタイプ:dCS 905」を聴いて下さい。
桑原、悠介:Bタイプ!
森崎:Aタイプ、Bタイプの違いはADコンバーターの違いだけです。機材のルーティングはProToolsのデジタルアウトをADA-8でDA(デジタル→アナログ)して、PrismSoundのアナログコンプMLA-2を通しています。これはコンプはオフってスルーだけさせています。
悠介:通すだけで変わる、と。
森崎:通すだけです。コンプを掛けたいわけではなく、このコンプの持つサウンドキャラクターだけが欲しいので。そこからアナログケーブルを通ってADコンバーターに入ります。AD(アナログ→デジタル)して、デジタルになったものをSYSTEM6000でEQ、コンプの調整をして最終的に一番下にあるdB Technologies 3000Sで16ビット/44.1kHzに変換しています。
一同:ふむふむ。
森崎:いまプレイバックで聴いているのは16ビット/44.1kHzなので、最終的なCDの音、という訳です。Aタイプ、Bタイプで音量レベルはいっさい変えていないです。単純にADコンバーターのみの違い。こちらがBタイプ。
桑原:Bタイプ…。

♪〜Bタイプ試聴

桑原:なんか、優しい!(何度か原音と切り替えてから)さっきの方がなんか、前に前に来るような?
森崎:そうです。これがこの機材の特徴です。さっきのAタイプの方がパンチが有るから聴感上は大きく聴こえますね。
悠介:すごい。
桑原:AとBだけですか?
森崎:今のところはね(ニヤッ)。それが決まったら次はケーブルの選択をしますよ。
桑原:(悠介に対して)分かる?あとは、ヨロシク!
悠介:はいはい。(マスタリング席中央にて試聴)
桑原:なんかAの方が聴いてる時に「おおっ!」って思うんですよね。アタックが強くくるからかなぁ。
悠介:こっち(Bタイプ)の方が気持ち真ん中の方が聴こえるような気がする。midのあたりが。
桑原:そうそうそう!でもLowとかはAの方がハッキリしてるのかなぁ。
森崎:レンジはBの方が広いですね。上も下も伸びてるから、ナチュラルに聴こえるんです。ADA-8(A)の方が、どちらかというと周波数特性が少しこうカマボコ型なので、アナログのコンソールを通ったような音のニュアンスに近い、ガッツがありますよね。
上田:聴きやすい感じがあったかな。
森崎:聴きやすいですよね。
桑原:ムキー、わっかんなくなってきた!
上田:好み、じゃないかな。
悠介:もう一回、Aを聴かせてもらっても良いですか?
森崎:好みで選んでOKです!パッと聴きでどんどん良い方を選択してください!
上田:考えると分かんなくなるよ。もうね、第一印象でね。
桑原:ですよね。考えちゃってるよ、私。
森崎:方向性があんまり逸れて僕がアドバイスするから大丈夫。(笑)

♪〜再びAタイプ(PrismSound ADA-8)試聴

森崎:これAタイプ。
桑原:全然違う!
上田:広がり方が違うね。Bタイプの方が、やっぱりレンジが広い。
森崎:そうですね。ライブに例えればBタイプの方が「後ろの席で聴いてる感じ」がします。
桑原 :そう〜〜〜それっ!それですよね!それだ!
森崎: Aの方が前気味。だから、ここ(目の前)に演奏者が居てこれくらいの席で聴いてるイメージはね、Aなんですよ。
桑原:2階席っぽいですよね、Bは!
森崎:精神的にリラックスしてる所で聴けてる感じ。
桑原:でもずっと聴いていたらBな気がする。ね、もっかいBもらっていいですか?
森崎:さっき「音量大きい方が良い」って言ってたじゃないですか。どちらかといえばBの方が小さく聴こえます。これも判断基準の一つですね。

♪〜再びBタイプ(dCS 905)試聴

悠介:クリアーだなぁこれ。
桑原:始まった瞬間は、私Bの方が好きなんですよ。
悠介:瑞々しいというか。
桑原:そう、みずみずしい。Bかな。んあーBな気がしてきた。
悠介:うん、Bいいね。
上田:いいんじゃない、2人ともBの方がいい気がするって言ってるって事は。
桑原:Bでいきます!
森崎:了解です!Bを選択されるっていうことは、普段やっぱり生楽器に一番近いところで音楽を聴いてるからだと思います。比較的ROCK系のミュージシャンはAを選択する方が多いです。JAZZ系の方はBを選択することが多いですね。レコーディングエンジニアさんはAが好きですね。やっぱりミキシングコンソールでミックスした音に近いダイレクトの音ですね。
悠介:普段聴いてる音に近いって事ですね。
桑原:うん。なんか、ちょっと加工されてるっぽく聴こえたんですよ、A。
森崎:それでは次は、24ビット/96kHzのデータをDSD 5.6MHzにアップコンバートしてKORG MR-2000S(DSD)でプレイバックします。

♪〜DSD試聴

悠介:なんかローエンドが凄く出てきた気がするんですけど。
森崎:もう一度PCMを聴いてみます。こちらがPCMです。

♪〜PCM試聴

桑原:こっちかも。うん、私こっちです。
悠介:もう一回DSDを…。

♪〜再びDSD試聴

桑原:ある意味鮮度はこっちの方が高い気もするなぁ…。
悠介:おれこっちかな。
桑原:割れたー!PCMの方が、ピアノの、これ(アタック)は出る気がした。わーかんないですよー!
森崎:別のセッティングを試してもいいですか? DSDでADA-8(Aタイプ)を聴いてみましょう。今回はDSDとdCSのコンバーターの相性が良くないようなので。
桑原:なんか頭が割れそう(泣)
上田:でも楽しいね、なんか選択肢があってね(笑)
森崎:僕の中ではゴールは見えているので大丈夫ですよ(ニヤッ)
桑原 :なんか、ウケる!神様みたい!
悠介:(笑)

♪〜Aタイプ&DSD試聴

森崎:Aタイプで、DSD。ピアノのアタックが出ますね。勝負するんだったらこのセッティングとさっきのBタイプ&PCMかな。
桑原:あっ、良いかもこれー!
森崎:悪くないでしょ。これだとね、ローエンドがそこまで伸びないんですよ。バシッ!と止まるから。もう一度Bタイプ&PCMを聴き比べて決めればOK。DSDにして良くなったのはベースですね。音がが太く、ブリッときますよね!
桑原:それは、思った。
悠介:ベースはラインだけで録ってるから、どうしてもその「ライン臭さ」が残っちゃうのはイヤで。
森崎:これなら、そのライン臭さが無いですね。
悠介:そこが補えてるから良いですね。
森崎:では、Bタイプ&PCM。

♪〜再びBタイプ&PCM

桑原:あぁ〜、全然ベースが違う。
悠介:おれはこっち。
桑原:私は、あっち。また割れた(泣)
森崎:ここから先は話し合いで決めて下さい!(笑)両方とも良いですよ!僕は色々なシステムで聴いて鳴りが良い方を選択しようと思っています。ラージモニターで聴いて良くても、ラジカセやヘッドフォンで鳴りが変わることがあるので。

♪〜再び、Aタイプ&DSD、→再度Bタイプ&PCMをラジカセで試聴

悠介:今のこの環境(ラジカセ)だったら、やっぱり2つ目の、後者(Bタイプ&PCM)がいい。
桑原:あたしも2つ目。
森崎:僕も2つ目。
上田:自分もそう。
桑原:あははー揃った(笑)
悠介:ラジカセで聴いたら明らかに後者が良いですね。
桑原:明らかにそうですね。
森崎:どの辺が良かったですか?
悠介:全部の楽器がハッキリと同じレベルで聴こえてくるって言うか。
桑原:ピアノが特にタッチした時に良いようにアタックが出なかった、Aだと。威圧感に聴こえてしまったから。Bタイプの方がナチュラルに聴こえた気がします。大きいスピーカーで聴くとAタイプのタッチの強さも良い感じに丸みを帯びつつ聴こえるんですけど、これで聴くとそれがダメになっちゃって。
悠介:全体が、ふくよかなんだけどクリアー、そんな印象があります。Bは。
森崎:(沈黙の後に)問題ないと思います。PCMの方はリズム系の音が良かったですね。ミックスマスターが96kHzで録ってあったからかもしれません。今回はDSDにアップコンバートすることで「良い感じ」には変化しなかったと思いました。
桑原:そっか機械にも得意・不得意があるんだぁ(泣)
森崎:本来ならばDSDにアップコンバートすることで音のフォーカスが鮮明になるんだけど、ミックスマスターの情報量が大きかったからそれを素直に再生したPCMがよかったですね。
悠介:録り音が良かったから?
森崎:その通りです。例えば音源が24ビット/48kHzとか、44.1kHzとかだと圧倒的にDSDの方が良い事が多いです。という事で今回は間違いなく後者でいきましょう。Bタイプ&PCM。
桑原:はいっ。
森崎:これ(ラジカセ)で聴いてみると、オケのバランスが良いかどうかが分かるんです。(笑) 「ナチュラルさ」という部分がコンバーターの違いでかなり解決しましたね。
桑原:凄いね。
森崎:(再びラージモニターで再生して)う〜ん、このバランスは完璧です!(笑) ここから先はケーブルでさらに追い込んでいきましょう。

♪〜試聴

森崎:このバランスかなり良いけど、せっかくだからケーブル2、3種類聴いてみますか?(ニヤッ)

− つづく −


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