Saidera Mastering Blog

CDマスタリング、DSDレコーディング、ハイレゾ配信&ストリーミング。 サイデラ・マスタリングは、常に最新のテクノロジーとワークフローにより「伝わる音」の技術を提供します。

[]Ametsub 3rd Album/All is Silence



チーフ・エンジニアの森崎です。

本日発売のAmetsubさん3rdアルバム「All is Silence」のマスタリングを、前作「The Nothings of The North」に引き続きやらせていただきました。

<事前打ち合わせ>
ミックスがほぼ仕上がった段階で事前打ち合わせをしました。「2nd album「The Nothings of The North」(2009年発売:Mastered by Masato Morisaki)の時ようなビートや質感、だけど時代の流れに沿った最先端の音にして欲しい!」このコンセプトに沿って音作りをしていきました。

<2種類のフォーマットを聴き比べ>
最初に行なったのが音源の聴き比べです。一つは「24ビット/44.1kHz WAV」もう一つは「16ビット/44.1kHz WAV」です。両者を切り替えて比較試聴しながら楽曲に必要な要素とそうではない要素を明確化します。低域の厚み、空気感、ノイズの抜け、広がりは圧倒的に24ビットが有利でした。しかし16ビットには24ビットには存在しないガッツがあります。今回はこの要素はEQとリミッターの微調整で追い込むことにしました。

<実際のマスタリング>
音量レベル、音圧感の確認はAmetsubさんがオリジナル音源をノーマライズしたものを持ち込んでくれたので、それと比較しながら追い込みます。このような参考音源があるとコミュニケーションがとてもスムーズです。マスタリングでのポイントは、一度DAした後の、ADコンバーターのサンプリング周波数=TC Electronic System6000の動作クロック周波数の選択でした。最初は24ビット/88.2kHzよりも24ビット/44.1kHzの方がよりイメージに沿ったサウンドを得ることが出来ました。88.2kHzでは音のフォーカスがハッキリして低域の響きが豊かなため、アタックと響きがバラバラに聴こえます。それに対し44.1kHzではアタックと響きが良い感じに馴染みキック全体が鳴っているように聴こえます。Ametsubさん曰く「44.1kHzの方がラジカセなどの小さなスピーカーでもビートを感じやすい」ということでこちらを選択しました。こういったフォーマットはあくまで実際に聴いてみてバランスの良い方を選択することが大切です。必ずしもハイサンプリングが良いとは限らないのです。

<EQとリミッターの微調整>
ガッツのある音に仕上げるには周波数特性を広げすぎずに中高域で厚みのある音に仕上げる必要があります。それではエレクトロニカのノイズの音をかっこよく聴かせる裏技をお話ししましょう!まず最初に10kHz辺りからシェルビングEQで高域全体を抑えます。0.2dB〜0.5dBで十分効果があります。こうすることで高域に集中しているノイズ成分を中高域に移行します。さらにビートを刻んでいるノイズを狙って強調します。周波数は4kHz〜8kHz前後です。リミッターの調整はガッツを出すためリリースタイムを100ms前後と遅めに設定しました。こうすることでノイズ成分の細かなピークを抑えることが出来るため音量レベルもかなり大きく入れることが可能になります。

Ametsub: 「2nd albumの時ようなビートや質感、だけど時代の流れに沿うように着実にステップアップしてる音。そして原曲に忠実。だけど倍音を含んだプラグインでは出 せない味わい。すかっとした抜けの良さとビートの密度濃さも兼ね備えていて…。語彙力に欠けていてこの感動を伝えきれないのが悔しいですが、とにかく最高 です。。。!!!!!!」

アナログ機材を通すとノイズ成分が生き生きと躍動してきます。アナログの暖かみ、デジタルのソリッドな質感を兼ね備えたサウンドをぜひ聴いてみてください。



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