Saidera Mastering Blog

CDマスタリング、DSDレコーディング、ハイレゾ配信&ストリーミング。 サイデラ・マスタリングは、常に最新のテクノロジーとワークフローにより「伝わる音」の技術を提供します。

[]リミッターの使いこなし(その6)「倍音の魅力を引き出す」

チーフ・エンジニアの森崎です。

R&B;やヒップ・ホップなどのジャンルは柔らかくて弾力のある低音、しっかりと止まった低音が魅力です。しかしサウンド全体を柔らかく仕上げると物足りなさを感じます。そんな時にはボーカルの倍音を引き出してやります。より魅力的な声に仕上げるのはもちろん、一振りのコショウで料理の味がしまるようにサウンド全体をクリアーに抜けよく表現するスパイスになります。

ボーカルの倍音を引き出すにはテクニックが必要です。今回はデジタル・リミッターを使用してのテクニック。僕がよく使う機材はTC Electronic SYSTEM6000のブリックウォール・リミッターです。

このリミッターはレベルを入れすぎると歪みます。ただしアナログ機材のハーモニック・ディストーションと同様に心地よく歪ませるポイントを見極めるとチューブアンプを通したような透明感のあるざらついた抜けのいいサウンドになります。(Waves L2のように歪みにくいリミッターではデジタル特有のマットで艶のないサウンドになってしまいます)
リミッターの入力レベルは0.1dB単位でシビアにコントロールします。リリースタイムは速め。遅くすると音が丸くなり低音の切れがなくなるので注意。

そして最大のポイントはEQのコントロールです。ボーカルがリミッターにかかるように周波数は(一例ですが)630Hz、1.2kHz、2.5kHz、4kHz、6.3kHz、10kHz、16kHz辺りで強調します。もちろん声質によってレベルは調整します。このEQのコントロールで透明感のある倍音、きめの細かい倍音などニュアンスを変えることができます。

この方法ではパンを左右に振るようなミックス例えばロックのディストーションギターなどでは歪みやすいですが、音数が少ない楽器がセンターに集まっている楽曲ではバッチリ合います。


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