[]YAMAHA NS-10Mの時代
チーフ・エンジニアの森崎です。
本日はYAMAHA NS-10Mについて。音響ハウス時代の思い出を少し…。
NS-10Mの周波数特性は60〜20,000Hz、クロスオーバー 2,000Hzなのでちょっとピークのある音を入力したり、一つの帯域で、特に高域をEQしすぎるとツイーターがとんでしまう。このようなセッティングのモニターシステムの使いこなしはとても難しい。NS-10Mをバランスよく大音量で鳴らすには経験とノウハウが必要なのです。このスピーカーを鳴らすことが出来れば一人前です。
当時NS-10Mのスピーカーユニットは消耗品と考えられていて、音がへたればすぐに新品のユニットに交換。だから交換用のユニットのストックは充分にありました。スピーカーユニットを交換すると音のキャラクターが変わる。エイジングをして馴染みを出してからセッションで使用しますが、それでもバックアップ用のNS-10Mが2、3ペアは待機してました。エンジニアも2STの音、6Stの音というようにスタジオごと、モニターシステムの特徴を完璧に熟知していました。この経験を通して「モニターシステムの特徴を理解することこそエンジニアに必要不可欠である」ことを学びました。
NS-10Mの一番の魅力は明るく元気のあるサウンド。ミュージシャンがコントロールルームでプレイバックを聴いたときに盛り上がれる音楽的な音。アーティストがのってくれば良い演奏を録音出来る。アーティストに気持ちよく演奏してもらうことは音楽制作では最も重要です。だからレコーディング・エンジニアは良い演奏を録るためにプレイバック、キューボックスの返しのサウンドにこだわるんです。
「相手が演奏したいタイミングでテレコを回せ」「俺たちは音を録っているのではなく音楽を録っているんだ」「そうすればアシスタントでも音楽制作に参加出来る」「ミュージシャンとテレコで会話しろ」と。マスタリングで、曲間決めをするとき、この言葉を思い出します。NS-10Mのサウンドを通して一流のエンジニアの心を教わりました。
※テレコ:テープレコーダー。SONY-PCM3348、STUDER-A820など。
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